藤川孝之・青木隼人 – 言葉と音を 贈ること

2020.11.28  by fumi

早いもので、今年もあとひと月となりました。

思わぬ疫病に翻弄された1年ではありましたが
動きを止め、自分達の身近にある物事や周りの人と接しているうちに
いま何が本当に大切なのかを、ゆっくりと考える時間をもらったような気がします。

2011年から約5年程にわたり、弘前の身近な人達と運営していた、松ノ木荘。

弘前の街中にある、古い民家で川に面した中庭がありました。
庭は鳥たちの休憩所となっているようで、やってきては羽を休め、
いろんな声をきかせてくれました。

光の入り方がやさしく、表情を変える様子で季節の移り変わりを感じていました。
鳥のさえずりと街の雑踏の音が入り混じるその場所は、
街の中でそこだけ時間が止まったような不思議なところで、

そこで過ごした時間は、私達にとって今も忘れることのない大切なひとときです。
その松ノ木荘で2015年7月に行われた「かだる」という企画展の中の
青木隼人さんの朝の演奏会の音源と、松ノ木荘で描かれた藤川孝之さんの絵をひとつにして
二枚の絵葉書を収めた、絵はがきセットをつくりました。

この音源は、ずっと自分達でときどき聴いては思い出し、楽しんでいるものでした。
今年に入って思うようにならない日々の中、誰かに届けたいと思い
青木さん、藤川さんとのやりとりを重ね、ひとつの形になりました。

二枚にしたのは、言葉と音を分かち合ことができるようなイメージで
一枚は自分の手元に、そしてもう一枚はあなたにとって大切な誰かに。
あなたの言葉を添えて、届けて欲しいと思ったからです。

絵はがきと一緒に封入されている紙には、約20分の演奏が
ダウンロードできるリンクが添付されています。
今回の発売にあたり、田辺玄さんに音源のリマスタリングをお願いしました。

音像がくっきりとして、目をとじるとあの日の弘前に居るような気がします。
7月初夏の朝の空気、鳥のさえずり、風の吹きぬける音、
藤川さんが絵を描く気配、青木隼人さんのギターの音。

その時間を一緒に過ごした人にも、そうでない人にも。ひとつの朝の時間を。
スマートフォンに入れて外で聴いたり
パソコンに取り込んで家で聴いたり。
気軽に、自由に、目の前に広がる音と景色を楽しんでいただけたら嬉しいです。

「かだる」という展示名は、人と人が集うという意味合いでつけました。

人と接すること、行き来することを制限される中で気がついたのは
誰かと何かを分かち合うことに距離は関係なく、
お互いに思いあうことで心は近くなれるということ。

一枚の絵葉書を通して直接ではなくとも、
大切な誰かと同じ時間を過ごしてもらうことで
心を近くに感じてもらえたらいいなと思っています。

一年の終わりは、どんな年であっても節目であることは誰にとっても同じこと。
いろんな想いを巡らせて、誰かに自分の言葉と音を
一緒に届けてみるのも良いかもしれません。

「言葉と音を贈る」

言葉と音。
景色を誰かと分かち合う

二枚の絵はがき。
藤川孝之 / 音楽 青木隼人

マスタリング 田辺 玄 (Studio Camel House)

録音
2015年7月5日 日曜日の朝 松ノ木荘 (弘前市)にて

限定80セット 2020年12月1日発売

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